菅首相による日本学術会議会員の任命拒否に関する声明

2020年10月5日
日本生活指導学会 理事会

 私たちは標記の問題を深く憂慮し、その撤回を求めます。

 日本学術会議は、戦前において科学・技術の探究が国家主義・軍国主義のもとで国に統制ないしは従属させられたことの深い反省に立ち、1948年に日本学術会議法をもって設立されました。その目的として、「わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与すること」としています。しかも、その職務と権限は「独立して職務を行う」(第三条)のとおり、政府に対しても独立性を保障されています。

 私ども日本生活指導学会(1983年創立)は日本学術会議協力学術研究団体として登録されている研究団体で、多様な学会の学際性を旨として人々の生活・自立・共生と教育・心理・福祉・司法・医療等の在り方を研究しております。その意味で、私どもの学会は日本学術会議の一構成員といえます。

 このたび日本学術会議法第七条に基づいて行われた会員推薦のうち6名について菅首相が任命を拒否したことは、同法第七条第2項の「会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」という規定に反するものです。この「推薦に基づく任命」は、1983年日本学術会議法改正時における1983年の政府の国会答弁、内閣法制局の見解において、「形式的任命」とするとしており、任命は裁量行為ではないと説明しております。

 学術研究の根幹は自由な探究心と多様な方法及び批判的で創造的な構えによって真理に迫ることにあります。上述の事態は、この「学問の自由」の基本的精神を政府の意向で規制することに通じるものです。また、今回の任命拒否は、6名に関わる問題に留まらず、それぞれの会員候補の方々が属する専門領域からの会員が出なくなってしまうことを意味しており、学術の発展において大きな禍根をもたらしかねません。以上のことから、研究・教育・実践に携わっている私どもの学会が、基盤として共有してきた会員一人ひとりの自由な探究への侵害につながる問題としても看過できません。

1 内閣総理大臣は、任命拒否の理由を明らかにすること

2 日本学術会議法に反するこのような行為を速やかに撤回して、同会議の推薦に基づく任命を行うこと

以上、2点を要望します。

 また、日本学術会議には、任命拒否の撤回に向けた粘り強い取り組みを求めます。

 私ども日本生活指導学会としては、引き続き、理論、臨床の両面でいかなる研究関心も学術の健全な発展にとっての大事な萌芽・原点と受け止め、会員の自主的活動を促進していくように努める所存です。

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です